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2008.04.26

-日本産イワナの分類と現状-その3 (文’07.9Dr.Y)

ゴギは島根県下に生息する頭頂斑の大きなイワナで、斐伊川以西のゴギは一見するとキハゲハの幼虫かニシキヘビのような模様をしている。隣接する鳥取県のイワナはタンブリと呼ばれるニッコウイワナであるが、境界の大山周辺には両者の中間型が分布している。私と「鳥取組」の夏の合宿は15年以上も奥只見で実施しているが、春の合宿はこのゴギを求めて残雪の奥出雲で行われており、最大は31cmである。普段は20cmもあれば大型に属する。性格は穏やかで、オショロコマと共に釣りやすいことが激減の理由になっていると思う。

以上が日本の在来種であるが、外来種で定着しているものは日光湯川や北海道西別川のブルックトラウトと中禅寺湖のみに生息するレイクトラウトがある。まら管理釣り場の一部では北極イワナ(アークテック・チャー)や北米型のドリーバーテンも発眼卵輸入により、放流されている由である。

またイワナに系統的に最も近いものはイトウであり、生態域もアメマスと類似している。釣り味もくねくねとしてイワナとよく似ている。イワナの変異型としては三陸海岸の一部その他から報告されているムハンイワナがある。パーマークの無いアブラハヤのような魚体とのことで某北里大学生に依頼してあるが、未だ釣れた報告がない。

流れ紋は主にヤマトイワナの変異で全国で数カ所が知られている。そのうちのいくつかは私も確認しているが、じつに神秘的な魚で大イワナとは違った魅力ある幻の魚といえる。なお、ブルックとイワナのF1にも流れ紋が生じるが、これは交雑魚であって流れ紋ではない。また、人工的にはタイガートラウトとよばれるブルックとブラウンのF1にも流れ紋が生じるが、天然には存在しないことになっている。但しヤマメとイワナ、アマゴとイワナ、ゴギとヤマメには天然でも交雑魚が生じることがあり、イワヤマとかゴギヤマメと呼ばれ、いずれも背部に流れ紋があり、形態もちょうど両者の中間形である。

以上、長々と記してきたが、日本産イワナ属には、色々な地球変異があり、その中でも谷ごとに斑紋や着色斑に差異がある。私自身、キリクチとレイクトラウトを除く全てのイワナグループを釣り、飼育した経験があるが、一般にいじけた小沢のイワナほど個性的で、小型でも成魚になっている。幼魚期の栄養状態が生涯の成長を左右するのであろう。また一般には西の方の魚、とくにヤマトイワナが弱く、北の方の魚ほど丈夫な印象がある。

奥只見のイワナはニッコウイワナの中でも沢のものは黄色斑が著名であり、ダムのものは銀化して大型するという貴重な系統であると結論できる。我々は彼等の行く末を案じながら、一方で体力の続く限り彼等を追い求め続けたいものである。