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2008.04.04

大鳥岩魚-その希少性と最近の傾向-その3(文’07.9Dr.Y)

私は20年以上もベテラン諸氏の歴史的トロフィーサイズを大鳥ダムや田子倉ダムで実見させていただく機会を得ているが、そのプロポーションや雌雄の性差をみると、その臨界点が55cm付近であるような気がしてならない。大鳥では83cm・75cmの記録があり「とんじろ」のマスターが近年観察した河川遡上では80cmオーバーのものもあるという。

これらの超大物イワナは単に釣られずに済んだ魚というだけでなく、遺伝的、血統的な幸運魚というべきかと思う。例えばイトウやニジマスでも大型の成魚で毎年成熟せず、産卵遡上もしない例があることが報告されており、あるいはこれら超大型イワナも「たまにしか」成熟しない偏屈で長寿な幸運魚なのかもしれないと想像をたくましくするのである。

また、ダムでは大型ジグがひったくるように奪われたり、16ポンドラインが切れたという超大物の噂も聞くが、実際にランディングに至っていないので何ともいえないというものの、過去のデータから推測して、超大物は基本的に移動の少ない「待ち伏せ型」の捕食生態で生活しており、我々が一生懸命やっているトップの釣りやフライメソッドの及ぶ範囲まで残念ながら回遊してこないのではないかという疑問が湧く。

結論として超大型を捕らえるにはメソッドとポイントの両面でコペルニクス的発想の転換が必要という気がしてならない。どういう手段でも、どんな悪場でも、しらみつぶしにやってみる覚悟が必要ということであろう。私も来期以降工夫してみたいと思っている。

「とんじろ」のホームページをごらんになってお出かけになる方に一言、大鳥イワナは本当に気まぐれであり、ダムの放水という人為的なファクターに左右されることも多い。釣れた記事が多いが釣れないときの方が遙かに多いのである。釣れないときはお互いさま、大いに釣り談義を交わして楽しい交流を持ちたいものである。釣り場を共有したのも何かの縁、誰かが大物を釣った時、若干のジェラシーを感じながらも大いに喜んであげられる度量を持ちたいものである。

奥只見は私にとって渓流釣りの入門の地であり、かつて全国の渓流を歩いた時期もあったが、ここ数年はほとんど、ここだけでになっている。ほかの渓流で水質の悪化、魚影の減少が続く中で、むしろ魚体の向上がみられるのは、その血統もさることながら、釣り人のマナーの向上が大きい。

会越国境地帯に残された秘境で、イヌワシ山野草を眺めつつ、カジカガエルやエゾハルゼミの声を聞きながら、50cmオーバーの大イワナを狙う。帰りには少しの山の恵みをいただく、そんな旅が可能な日本でも稀有の自然が「とんじろ」の周辺には残っているのである。

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